
人は様々な金属製品に囲まれているわけですが、装飾品などに含まれる金属に「かぶれる」方がいらっしゃいます。このような方は「金属接触アレルギー」と言い、メガネのフレームやニッケル硬貨、下着の金属、スプーンや台所器具などのステンレス用品などに触れると「かぶれ」ます。
また、少し盲点になりますが、金属アレルギーは、その対象物に触れることによって局所的に「かぶれる」ことの他に、食事に入っている微量金属を摂取することで身体中に発疹ができてしまう全身型金属アレルギーとなる方がいます。これは、「全身型金属アレルギー」と呼ばれ、チョコレート、豆類、魚介類、内臓類、ワインなどに含まれるニッケル、クロム、コバルトなどを食べた時に、口腔粘膜や消化管から体内に吸収され様々な発疹が起こるのです。「アトピー性皮膚」として治療されていた方に実は金属アレルギーでしたという方もおられます。

「金属接触アレルギー」はパッチテストでの検査で陽性となることがあります。「全身型金属アレルギー」はパッチテストで陽性と出る時がありますが、出ない場合もあり、そうなると内服テストや吸入テストなどが必要となりますが、安全面から十分な検討が必要です。
実は手湿疹の中に「異汗性湿疹」(いかんせいしっしん)と呼ばれる、水疱や膿疱(のうほう)を伴うものが出現する方の中には金属アレルギーが含まれていることがあります。これは体内に取り込まれた金属の(尿や糞便中から排泄する)排泄経路の中に、「汗」からの排泄も含んでいることが原因と考えられます。手湿疹で悩まれている患者様は一度パッチテストを施行するのも解決の糸口の一つかもしれません。

「全身型金属アレルギー」は原因が食事と言われていますので摂食を制限すると良くなりますが、栄養学の観点から過度な摂食制限は推奨されていません。できることはステンレス製の食器を変更することや、貧血がある方はそちらの治療もしてただくこと(鉄欠乏性貧血はニッケルの吸収が増加します)、牛乳を摂取するなどがあります。