
新しい皮膚科 第3版より
「パッチテスト」は、「かぶれ」た、ご経験が誰でもあることから、ご存じの方が多いかと思います。パッチテストの対象となるアレルギーは、有名なGell &Coombs(ゲルアンドクームス)分類の中でⅣ型アレルギーです。
つまり、患者様がⅠ型アレルギーの場合、パッチテストでは陰性となってしまう可能性があります。
パッチテストは外来で貼付し、48時間(2日間)後に除去して、15分後に一回目の判定、72時間後に2回目の判定を行い、場合によっては1週間後に3回目の判定を行います。
判定は決まった基準(本邦基準、ICDRGなど)で判定します。
合計で最短3日間かかりますので週末施行すると判定日に休診日が重なってしまいますので、月・火・水など週の前半で施行ご希望いただければと思います。

あたらしい皮膚科第3版
ここからは詳しいアレルギーの分類なので、興味のある方に読んでいただければと思います。
アレルギーの分類とテスト方法についてに戻りますが、実はアレルギーはⅠ型〜Ⅳ型まであり、それぞれ全然違う機序で起こります。
Ⅰ型アレルギーは有名なものに小麦粉製品、ソバやピーナッツを食べて数分で発作が起き、瞬く間に呼吸困難に陥る、いわゆるアナフィラキシーと呼ばれるものです。この反応は素早い反応で、命に関わる可能性が高く注意が必要です。表面にIgEを結合した肥満細胞(ひまんさいぼう)が抗原(アレルゲン)と反応し、ヒスタミンやロイコトリエンといった炎症惹起物質を放出、血管拡張、気道浮腫などを引き起こします。この型のアレルギーが疑わしい場合は、プリックテストやスクラッチテストと呼ばれる検査を行います。
Ⅱ型は自身の細胞表面の物質に対して自身が抗体を産生してしまう反応です。また次の機会で説明しますが、水疱性類天疱瘡(すいほうせいるいてんぽうそう)と呼ばれる水疱が全身に出現する疾患はこれにあたります。自己に対する抗体ができますので、血液検査や直接蛍光抗体法(ちょくせつけいこうこうたいほう)などで検査します。
Ⅲ型は自身の抗体と抗原(外来から入ってきた異物など)が一体化し血管や臓器に沈着(くっついてしまう)してしまうもので、有名なものに血清病や皮膚白血球破砕性血管炎(ひふはっけっきゅうはさいせいけっかんえん)などがあります。こちらも直接蛍光抗体法などで検査します。

あたらしい皮膚科学第3版
Ⅳ型は皮膚科領域で言う、まさに「かぶれ」を意味します。ネックレスをしたら首が「かぶれ」る、漆を触ると皮膚炎が起きてしまうなどが代表的な症状です。感作相と惹起相の2段階で発症します。初めて漆を触った時、抗原が体内に侵入、抗原提示細胞に取り込まれて所属リンパ節でT細胞を活性化させます。エフェクターT細胞とともにメモリーT細胞が生成、約48時間でピークを迎える(感作相)。2回目以降の接触で迅速にメモリーT細胞が活性化し免疫が発動する(惹起相)。Ⅰ型アレルギーが数分で発症するのに対して時間がかかる反応です。この型のアレルギーにパッチテストを用います。
ここまでで、アレルギーの分類や、その検査法について簡単にご説明しました。日常生活とアレルギーは密接に関係しています。遥か昔、単細胞で生まれた生命が、やがて自己と非自己を認識し、非自己を排除する機構を進化させてきており、その機構が故に発症している病気です。まだわかっていないことは多く、世界中の科学者が鎬を削って紐解いている分野です。ここに書かれていることも数年したら古い知識となることでしょう。常に最新の知識をup dateしていかないといけません。患者様で気になる症状がありましたらご相談いただければ幸いです。