
乾 重樹 日皮会誌:117(9),1427―1432,2007(平19)
お顔のガサガサや、赤みが皮脂分泌の活発な部位(いわゆるTゾーン、デコルテと呼ばれる部位など)に出現している時は脂漏性皮膚炎を疑います。頻発する時期は乳児期と思春期以降の成人に発症し、それぞれ「乳児型」、「成人型」などと呼ばれます。
「乳児型」は特に男の子、生まれてすぐの赤ちゃんの顔が数週間でガサガサで赤くなったことありませんでしょうか。生後2−4週ごろに被髪部や眉毛部、前額部に黄色のガサガサが付き、境目がはっきりとした赤みとなります。多くは、1歳ごろには改善します。「成人型」は慢性かつ再発性であり、頭部のふけ症、お顔のガサガサとして発症します。男性が多いようです。
「成人型」は再発性が高く、治療上も注意が必要です。
また、鑑別疾患として尋常性乾癬やアトピー性皮膚炎、接触皮膚炎(かぶれ)があり診断においても注意が必要です。

乾 重樹 日皮会誌:117(9),1427―1432,2007(平19)
脂漏性皮膚炎の原因の一つとしてマラセチア属と呼ばれる真菌が関わっているとされてますが、脂漏性皮膚炎患者さんの皮膚のマラセチアについて詳しく調査した論文(日皮会誌:131(6),1503-1509,2021(令和 3))があります。
マラセチア属の一つの特徴として好脂性(脂質つまり脂を好む性質)が挙げられます。つまり脂質の豊富な顔面などの脂漏部位を好みます。マラセチアはリパーゼ(脂を分解する酵素)を出し、顔面の脂質を分解し栄養とします。従って顔面の皮脂量とマラセチアの定着量は相関します。
マラセチはには多くの種類がありますが、杉田らは脂漏性皮膚炎ではM.restrictaが優位に観察されることを指摘しています。
マラセチアが出したリパーゼで皮脂は分解され老廃物である脂肪酸が過剰に出ます。この脂肪酸は皮膚の炎症を引き起こします。
その際アリル炭化水素受容体(AhR)にマラセチアが産生した老廃物であるMalassezin(マラセチン)がこのAhRに結合し炎症を惹起すると考えられています。
AhRに結合する物質を調査してみると外因性物質:ダイオキシン、ポリ塩化ビフェニル(環境ホルモン)、ベンゾ[a]ピレン(タバコに含まれる発がん性物質)、フラボノイドの一部など
内因性物質:キヌレン(腫瘍免疫関連物質)、FICS(紫外線照射により生成される)、インドール類(腸内細菌より発生)、ビリルビン(黄疸の原因、胆嚢より分泌)
そのほか植物由来のカンプフェロール、ケルセチンなどの結合するようです。
そこに何か治療のヒントはあるかと思案中です。
これらのことから予防も含めて、患者様のお力になれるかと思います。