赤ちゃんの口の周り、お尻の炎症

赤ちゃんの口の周りの皮膚炎はよく見る疾患の内の一つです。いわゆる「舌なめずり」皮膚炎と呼ばれる皮膚炎です。口周囲炎と呼ばれることもありますが、その場合「酒さ」(しゅさ)の概念を含むことがありますので注意が必要です。ほとんどの場合、舌でペロペロ、口の周りを舐めることによって起こることが多く、機械的な刺激でなっています。しかし、気をつけなけれがいけないものもあります。口囲皮膚炎の中でも複雑なものがあり、カンジダなどの真菌が関わるもの、アレルギー、代謝異常などがあります。

日皮会誌:1319),2033-20372021(令和 3● 2035

その中で皮膚科専門医が見逃してはいけないものに「腸性四端皮膚炎」(ちょうせいしたんひふえん)があります。

これは亜鉛が欠乏することによる、皮膚の炎症が原因と考えられています。皮疹の特徴に頭部の湿疹、肛囲の皮疹、口周囲の湿疹病変があります。

原因は亜鉛欠乏により外界刺激に対する炎症反応の亢進と言われています。ステロイド外用でイマイチ効果がない場合このような複雑な疾患も考えた方が良さそうです。

また、亜鉛が欠乏する理由は、赤ちゃん側の腸から亜鉛が吸収できない場合と、お母さん側の母乳に亜鉛が移行していない場合があり注意が必要です。

ここからは詳しい論文の話です。興味のある方はご参照ください。

「第 3 子にのみ生じた低亜鉛母乳による後天性亜鉛欠乏症」

日皮会誌:131(9),2033-2037,2021(令和 3)● 2035

には亜鉛が欠乏した角化細胞は化学物質の暴露でATPという化学物質を産生するそうです。普段ならランゲルハンス細胞という皮膚免疫細胞がATPを処理してくれて正常化するが亜鉛が欠乏するとランゲルハンス細胞が消失し、ATPが過剰に存在する状態となり、皮膚炎に至るとのことです。

ステロイド外用はランゲルハンス細胞を中心とした皮膚免疫を抑制するので使用でより悪化することが考えられます。

治療としては亜鉛剤の経口投与です。

当院にも多く患者様がいらっしゃいます。

日皮会誌:1319),2033-20372021(令和 3● 2035

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