にきび

あたらしい皮膚科学 第3版

にきびは医学的には毛孔(もうこう)に一致した紅斑や膿疱を生じる毛包炎(毛嚢炎)の一種で、「ざ瘡」(ざそう)と呼ばれます。

諸説ありますが、「にきび」と呼ばれる様になったのには奈良時代に遡ります。『万葉集』などには、「にきみ(膿みの意)」という言葉が登場します。「にきみ」は皮膚にできる膿をもったできもののことで、これが時代を経て変化し、にきみ → にきびとなったとされています。

また、「にき」=赤い、炎症を起こしたできもの(古語)。「び」=「瘡(かさ)」や「腫れもの」を意味する接尾語であり、この2つが合わさって「にきび」になったという説もあります。

なお、漢字表記の「面皰(めんぽう)」は皮膚にできた陥凹を表す医学用語で、これは中国から伝わった漢語で、顔にできる小さな膨らみ(皰=ふくれ)を意味しています。

90%以上の思春期男女が経験する疾患であり、アクネ桿菌(P.acnes)、毛包虫、内分泌(ホルモン)、ストレスなどの多くの要因が関与しています。

にきびの病因は毛穴の微小な外傷、閉塞、掻破やステロイド外用が原因と言われています。

治療としてはレチノイド外用薬(ディフェリンゲル)や過酸化ベンゾイル(べピオゲル)またはその二者の合剤、程度によっては内服(ドキシサイクリンやミノサイクリン)を処方いたします。

一度相談いただければ幸いです。

さて、以下は興味のある方に向けて詳しい発症機序(はっしょうきじょ)についてご説明します。発症の要因はホルモンバランス、角化異常、皮脂の増加、細菌感染が重要なファクターです。その他に遺伝的要因や食事、ストレスなども複雑に絡み合い発症します。

思春期になるとジヒドロテストステロンと呼ばれるいわゆる男性ホルモンが増加し、皮脂腺の機能が家蔵に亢進し、皮脂の貯留をもたらし、細菌の増殖

が起こります。P.acnesなどの細菌感染による、毛包の破壊と皮脂の分解が起き出現した遊離脂肪酸によって毛包漏斗部の過角化が起こり、結果毛包漏斗部が角質で塞がれてしまい、面皰(めんぽう)になってしまいます。

皮膚科専門医としてはSAPHO症候群やPAPA症候群などの複雑な疾患が含まれていることがあるため注意が必要です。また、女性で月経随伴性(月経周期とともに増悪)のある場合はPCOSなどのスクリーニングが重要となってきます。

治療には重症、中等症、重症・最重症と分け戦略を考えます。また、時期に関しても急性炎症期と維持期に分類し治療を組み立てます。様々な治療の中で最重症の場合、ステロイド局注、抗菌薬内服を行います。そのほかクリンダマイシン/過酸化ベンゾイル配合剤(デュアック)などを用います。一方漢方製剤も使用することがあります。男性にも使用できますが、十味敗毒湯には女性ホルモンであるエストロゲン生成を促す「桜皮(オウヒ)」が含まれており、ホルモンバランスを整える効果があります。長期のコントロールに向いていると考えられます。

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